2017/09/14

(No.2544): 歩く、こと (一)


いわゆるウヲーキングという部類に入るのだろうか。数年前からタイミングが合えば長い距離を歩くようにしている。とはいえ、スポーツというほどストイックなものではない。比較的長い距離を街を散策しながら歩く散歩の範疇である。

とくにここ数カ月は週3回ほど4〜5Km/回 歩いている。せいぜい4Km程度だからたいした距離ではない、が実際歩くとそこそこ疲れる齢。
普段スポーツもせず、移動にはバイクやらクルマやら電車やらが多いので、運動不足であるが、その改善のためというよりは散策しながら歩くのが好きなだけだ。
実際、電車で仕事帰りには手前の駅で降りて歩くとか、オフ日はちょいと歩きに出るとか、そんな程度だ。

歩く時は音楽もラジオも一切聴かないのが筆者流。しかも歩きながら考え事もほとんどしない。ただ只管に歩くルートの選定と街を探検すること、そして「呼吸」に集中する。
(あ、あとたまにingressもね)

GoogleMapを見ながらこっちが面白そうだとか、こんな道あったんだとか、そんな感じで適当にルートを決める。だからなるべく新しい道を、踏み入れたことのない場所を歩くようにしている。


そんなある夜のこと。
仕事帰り、某駅で下車し自宅までの4kmほどの道のりを歩いていた。駅から1kmも歩くと急に人通りも少なくなってくる。
ここを曲がったことないな、その先はI街道に出るし、よし行ってみよう。
都内といえどこのあたりは雑木林や畑も散在し、住宅街ではあるが外灯はちらほらとしかなく薄暗いところ。夜は歩いている人もいない。

しばらく歩いていると右上方向からお婆さんと思しき声が聞こえて来た。誰かと会話をしているのかと思ったが、そうではなくよく聞き取れないが、なにかを繰り返し言っている。右側には二階建ての老人ホーム風な建物。
耳をそばだてるとそれは、「おかえりなさいー」「おかえりなさいー」だとわかった。声のする方向を凝視すると、果たしてその二階の一つの部屋の窓から人の顔が突き出ているのを見た。
「!」一瞬びっくりした。
その部屋の灯りの逆光で顔まではよく見えないのだが、どうやらその部屋に入居しているお婆さんのようで窓から顔だけを突き出して筆者を見下ろし、「おかえりなさいー」「おかえりなさいー」と言っていたのだ。

筆者は軽く会釈をしてその場を後にした。


あのお婆さんは前の道を人が通るたびに、ああして「おかえりなさい」と声を掛けているのだろう。

その声はしばらく続いていた。



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